2004年06月12日

毎度下品ですいません

セックスをテーマにしたオンラインゲームが登場

「ねぇ、聞いてる? 6年も付き合ってたっつーのに、
 今更互いに仕事で忙しいから別れるっつーのよ直樹のヤツ」
「ハイハイ、聞いてるってば。同じこと6回も」
「ホラ聞いてないじゃない! 本当は7回目なんだから」
「……(この子、こんなに酒癖悪かったっけ?)
 まあ、美希もさあ、いつまでも愚痴ってないで、
 早く新しいの見つけちゃいなよ」
「そりゃぁあんたはイイわよ。素敵なダンナ様もらっちゃってさあ……」

私は別に酔っていない。たぶん。
つまらない喧嘩で直樹と別れた私は、
なじみの居酒屋で久米仙をロックであおりながら孝子にからんでいた。
確かに最初は自暴自棄気味に悪酔いしてたけれど、
不思議なもので、彼女にグチをぶちまけているうちに頭が冴え渡ってきて、
私はすっかり冷静になっていた。
ま、それが親友というものなのだろう。
それに相手はラブラブの新婚さんだ。多少八つ当たりしてもバチは当たるまい。
いや、当たるような気もするけれど。

「で、アンタ、ダンナとはネットで知り合ったって言ってたっけ?」
「そうそう、そうなのよ」
「ネットねぇ……得体の知れない相手と簡単にくっつけるなんて、
 もう世も末だわね」
「そーゆー旧世紀人みたいなこと言わない言わない。まだ新世紀は始まったばかりよ。
 ま、それはそれとしてね、このツールで知り合ったのよ」

そう言いながら、孝子は丸井の紙袋からソフトのパッケージらしきものを取り出した。
ピンクがかったハート形のアクリルケースに、DVD-ROMとインカムが揃いで入っている。
あら可愛らしいケースねと、思わず手に取ったが、
手元でよく見た瞬間、右の頬にチックが浮いた。
ディスクのレーベル面には、男女がからみあう様が、
劇画調でねっとりと描かれていたのだ。しかも複数人。

「アンタ……イイ歳こいてエッチゲームなんかやってんの?」
冷たい目線を送りつつ吐き捨てたが、
孝子は喜々としてそのゲームの素晴らしさを語り始めた。
「まあまあ、コレけっこうすごいのよ。
 出会い系サイトが進化したようなもんでね、
 ネットで会った相手と、ネット上でエッチまで行けんのよ」
「……アホらし」
「そう言わないでって。フツーの出会い系サイトで知り合って、
 オフで会って刺されるよりはよっぽどマシだって」
「だって、エッチできるったって、
 どーせテレフォンセックスみたいなもんでしょ」
「何よ、なんだかんだ言って、結構興味あるんじゃない」

……うっ。そう言われると確かに興味がないわけじゃない。
別れる前から直樹とはご無沙汰で、
かれこれ2ヵ月ほど私の身体は乾いている。

「……すごいの?」
「おっと、その気になったわね」
「……まあ」
「スゴイわよそりゃあもう。
 映像もかなりリアルでさ、なんとヘアーの1本1本までしっかりCG。
 このオプションのインカム着ければ、互いに会話もできるし」
「ふーん。キーボードでセリフ打つんじゃないんだ」
「だってほら、両手がふさがってるのに、打てるわけないじゃない」
なんで両手が……と言いかけたところで彼女の言葉の意味を知り、
私は赤面しつつ押し黙ってしまった。
「ね、ちょっとでもその気になったんならさ、
 コレあげるからやってみなよ。もうアタシには無用のもんだし」
「でも、ネットゲームなんて、接続とか難しいんでしょ」
「そんなのアタシがやったげるから。
 ヨシ、そうと決まれば話は早い。マスター、お勘定〜♪」

孝子に強引に腕を引かれ、
気がつけば私は自分のアパートまで引っ張られていた。
彼女は“あかうんと”やら“めいんさーばー”やら、
私にとっては呪文にしか聞こえないものを
テキパキと設定すると、ゲームの要点を書いたメモを残して帰っていった。
なんだか孝子のペースに乗せられっぱなしで、
しかも性的欲求不満まで見透かされていたようでなんだか恥ずかしいが、まあいい。
シャワーを浴びたあとで缶ビールを開けつつ、
ゲームを起動してみることにした。
インカムを着けてパソコンの前に座る自分を気恥ずかしく思いつつ
アイコンをダブルクリック。
するとマシンが10秒程私を待たせたあとで、
場末のラブホのようないかがわしい配色のウインドーを映し出す。
そして、ユースケ・サンタマリア風の気さくな男が画面に現れ、
ゲームのガイダンスを始めた。
「LustCityにようこそ!
 是非ともこれから私どもが提供する愛と肉欲の世界をご堪能ください。
 そのためにはまず、この世界におけるあなたの分身を作る必要があります」
私はユースケに言われるがままに、“分身”の設定を始めた。
設定項目は名前や性別に趣味、それと男の好み。
うわ、処女か非処女かまで聞くのか。
せっかくだから処女にしておこう。
そして身長、体重、スリーサイズ。
それに沿って私の分身キャラクターが形作られていく。
体格について正直に入力したら、
イヤな感じに腹の出た分身ができてしまい、ウンザリした。
するとユースケが身を乗り出してこう言う。
「これであなたの分身の設定は一通り終わりましたが、
 最後にプロポーションに補正をかけますか?」
思わず“はい”をクリックしたら、分身に“くびれ”ができた。
ユースケの対応の丁寧さに腹が立つ。くそぅ、明日からダイエットしてやる。

そんなこんなで、適当に“ミユキ”と名付けた分身はLustCityに降り立った。
孝子が残したメモに従い、“ロビー”とかいうところに行ってみると、
そこには合わせて20人程度の男女がひしめき合っている。
よく見ると女性のほうが多く、
あら、案外皆さんお好きなのね……などと思っていたら、
女性のほとんどが不自然な女言葉を使いつつ、
「にょ」とか「りゅん」などという謎の言葉を語尾に付けて喋っている。
そうか、やっぱしこんなネットゲームやるような奴、変な奴ばっかしか。
ボイスチェンジャー使ってまで女を騙って遊んでるんだ。
ん、ってことは、男同士でからんでるカップルばかりかココは。
そんな自分の想像にウンザリしているうちに、
いつの間にかミユキのそばに2人の男がにじり寄ってきていた。
パーツをいじくっているらしく、
2人の顔はケミストリーそっくりだった。
「ねえ、お姉ちゃん新顔?」
堂珍のほうがなれなれしく声をかけてくる。
「ええまあ」
「うわっ、ラッキー! 声が自然だ。ネカマじゃねえ」
声から私が正真正銘の女だと知った川畑が小躍りする。
「なあ、面倒くさい話は抜きでさあ、これから3人でしようぜ」
「どこがいい? ベンチでも電車の中でもイケルぜ。この世界は」
「オレたちは他の連中より優しいぜ♪」
「濡れる前から突っ込んだり耳の穴に入れたりしねえからな」
「ぎゃはははは」
ゲームの中とはいえ、
何が悲しくてこんなアホウに輪姦されなければならんのか。
2人の下卑た笑いから逃げようとすると、
彼らは両脇からミユキの腕を掴み、ガッチリロックしてきた。
インカムのヘッドホンから、荒い鼻息が伝わってくる。
ああ気持ち悪い。
パソコンの電源を切って逃げてやろうかと思ったその瞬間。
突然現れたラフな格好の男が川畑を殴り倒した。
その瞬間、勝手にミユキが堂珍の股間を蹴り上げる。
どうやら自動で暴漢を撃退する機能でも付いているらしい。
謎のナイトの登場と、思わぬ反撃にうろたえたケミストリーは、
尻に帆掛けて逃げ出していった。
ざまあみろだ。

「あぶなかったね」
「いや、どうも……ありがとう」
助けてくれた男は、浅黒い顔から白い歯を覗かせて微笑んだ。
「あいつらはタチが悪い手合いだよ。
 最近ここで知り合った女性を……その、気持ち良くさせて虜にして、
 リアルの世界で会ったときに騙して風俗に売ったりする犯罪が流行ってるんだ」
うへえ。そんなことになってるのか。
孝子のやつぅ、そんな危険な世界に誘ってくれちゃって。
でも、虜にされるほど気持ちいいもんなのかしら。
このバーチャルセックスってやつは。よぅし。
「ねえ、あなたは安全な人? 信じてもいい?」
「ん? まあいいけど、なんで?」
「私と、してみない?」
「え、あ」
恥ずかしいのか、インカムからくぐもった声が聞こえる。
テノール気味の透き通った声。
案外ウブで可愛いコかも。未成年だったらどうしよう。
……って、どうもしないか。
「私じゃ、イヤ?」
「いや、そんな、その、では、します」
「ははは。じゃ、しよ」
我ながら軽い女だとは思ったが、どうせゲームだし。
エッチするのは私じゃなくてミユキなんだから、貞操の心配もないし。
「君、名前は?」
「……タカシ」
私はタカシに頼んで、手頃なラブホに連れていってもらった。
いくら自由な世界とはいえ、最初から外でするのはイヤだったから。

さて、いよいよミユキの処女喪失である。
ゲームにも慣れていないことだし、マグロでいよう。
そのほうが処女っぽいだろうし。
もっとも、こんな手軽に処女を捨てる奴もいな……そうでもないか。
マウスの操作に悪戦苦闘しながらミユキをベッドに寝せてしばらく待つと、
タカシもぎこちない手つきでミユキの服を脱がせ始めた。
上着にブラウス、スカートと、衣服が一枚ずつはがされ、
少しずつミユキの肌があらわになっていく。
ふ〜ん、いきなり全部脱がせるのね。
向こうも操作に慣れてないのかしら。
それとも、現実世界でもそうなのかしら?
そうこう考えているうちに、
タカシがたどたどしくフロントホックのブラを外し、
いよいよミユキの胸が露出した。
補正のおかげで私よりも少し大きくなったバストが震える。
彼女がショーツ一枚になったところで、タカシが覆い被さってきた。
そして2人が唇を重ねる。
長い長いキスだった。
キスの最中、インカムから相手の吐息が伝わり、私の耳を刺激する。
なんだろう、この感じ。
結構、気持ちいいかも。
私がぼうっとしていると、タカシは唇をずらし、
舌を首筋にはわせつつ、どんどん頭を下の方に持って行く。
やだ……上手。ウブだったのは演技?
その後、タカシの執拗な愛撫は続いた。
ときにはソフトに、ときには荒々しく、
ミユキの身体を舐め回し、いじりまわす。。
まるで本当に私が抱かれているようなその様を見ているうちに、
私は興奮して左手を股間に持っていってしまった。
ヤバ、結構濡れてる!
そうこうしているうちにタカシがミユキのショーツに手をかけた。
その瞬間。
「イヤァ!」
ミユキへの感情移入が高じて、私は声をあげてしまった。
「ごめん、急だった? ガマンして。優しくするから」
丁寧で紳士的な相手の言葉にドキリとした私は、
ミユキが脱がされると同時にショーツを下ろしてしまった。

それから先の事は、詳しく語れない。恥ずかしすぎて描写できないから。
ただ、妙に気分が高揚して、そのあと3回も果ててしまったことだけは書いておく。
……これも十分恥ずかしいような気もするけど。
まあ、とにかく私は『LustCity』にどっぷりハマッてしまったわけだ。
仕事が終わると、すぐにタカシと待ち合わせてデート。
最初のうちこそホテルでしていたが、
やがて2人の欲求は高まっていき。
ほかのユーザーが見ていようとおかまいなしで、
公園やら電車の椅子の上やら非常階段の裏やらボイラー室やら、
所構わずバーチャルセックスを愉しんだ。

そんなある日、タカシが事のあとで不意にこう語りかけてきた。
「ねえ、ミユキさんは、現実世界で好きな人、いるの?」
「え? ここで現実の話をするのは野暮ってもんでしょ」
「いいから聞かせてよ」
私は躊躇しつつも答えてしまった。
「う〜ん、いな……いや、やっぱしいるのかなぁ」
「どんな人?」
「ん、そうね。優しくていい人だったわ。別れちゃったけどね。
 つまんないことで喧嘩して」
「まだ好きなんだ」
「うん。でもいいの。最近はミユキになって、
 君に抱かれてるほうがいいから」
うん、たぶん本気でそう思ってる。
「そうなんだ……ま、ウレシイけど。
 でも、それって“逃げ”じゃない?
 その人のこと、まだ好きなんだったら、ヨリを戻したほうがいいんじゃない?」
う、痛ッ。核心を突かれて私は動揺してしまった。
確かにタカシはいつも優しくしてくれる。
私も、タカシに惹かれている。
でも、タカシが愛してくれているのは、
美希じゃなくてミユキなのよね。
現実の私は、ビールでお腹の出た、微妙な年頃のOL。
ミユキは出るトコ出て、きちんとくびれもある若々しい娘。
現実世界のタカシは、私を愛してはくれないだろう。
そんなことを考えて気が滅入った私は、
逆ギレしてミユキをタカシに襲いかからせた。
「うるさいわね。アンタに何がわかるっていうのよ!
 さあ、もう1回するわよ!」
「ちょっと、もう4回目だって! もうやめようよ」
「いいから、す・る・の!……ンッ」
叫ぼうとしたときに、突然喉の奥から熱いものがこみ上げてきた。
なんだ? この酒の酔いとも乗り物酔いとも違う気持ち悪さは。
「ウッウッウゲェェェェ」
猛烈なえずきからは逃れられず、
私はキーボードに向かって勢いよくもどしてしまった。
もしかしてこれって……最後に直樹としたのが3ヵ月前……。
「な、だ、大丈夫?」
タカシの心配そうな声がインカムから流れ……
「なあ、大丈夫か? 大丈夫か美希!」
途中からその声はタカシのでなく、
すごく聞き覚えのある、懐かしい声に変わった。



しばらくして、私は事のすべてを産婦人科のベッドで孝子から聞かされた。
彼女が直樹から、私たちのヨリを戻せないか相談を受けていたこと。
彼女が『LustCity』を直樹にも渡していたこと。
彼女が2人のソフトの設定を、都合良く出会えるようにセットしたこと。
最初にミユキにからんできたケミストリーは、孝子のキャラクターだったこと。
そして、これはまあ言うまでもないだろうけど、
タカシはボイスチェンジャーを使った直樹のキャラクターだったこと。
結局私は、最後まで孝子の掌の上で踊っていたわけで。
そして話の行きがかり上、直樹と結婚したわけだ。



それから7ヵ月後。私は一人の女の子を産んだ。
名前をどうしようか思案していると、直樹が笑いかけた。
「悩むことないじゃん。俺たちの娘は、ミユキに決まってるだろ」
そうだっけ。そういえば元々“ミユキ”って、
子供が生まれたときにつけたかった名前だったっけ。
それを思い出した途端、私はあっちのミユキのことを思い出した。
「まだアカウント残ってるかな……」
そうつぶやきながらパソコンを起動した瞬間、私は驚いて直樹を呼び寄せた。
モニタの中には、幸せそうに赤ん坊を抱くミユキの姿があったのだ。
「タカシの子だ……」
「ってことは、私、いきなりおばあさん?」
直樹と顔を合わせて笑いながら、心の中でモニタに語りかけた。
「あなたも頑張ってね」

元ネタのニュースを先輩の掲示板で紹介したら怒られたので、
自分ちでネタにしてみました。
お詫びのつもりで、ちょっといい話にしてみたんですけど、
どうですかね?


posted by パパラー斉藤 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 下品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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